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腰ポケットを斜めに切ったスラントポケット

腰ポケットを斜めに切ったスラントポケットは、遠乗り用乗馬ジャケットが起源で、馬の上でもものの出し入れがしやすいようにデザインされた。いつしか英国風のスーツを代表する意匠のように位置づけられているが、乗馬服、それもフォーマルでないものがルーツであることを考えれば、ビジネススーツにはそぐわない。むしろカントリージャケットやスポーツジャケットで楽しむべきポケットだろう。フォーマル皮が高まると、ポケットにフラップは付かなくなったり、腰ポケットそのものが消えたりする。上衣にポケットチーフ以外のもの、重たいものを入れるのは野暮と考えられた名残だろう。フィレンツェの仕立職人のように、こちらがリクエストしなければ最初からフラップを付けない文化圏もある。アイヴィースタイルでは、パッチ&フラップが定番だった。パッチポケットの美しさで定評のあるナポリの仕立職人にビスポークを頼んだときは、こちらのサイズをあれこれ測ったものだ。なぜかと問うと、「腰ポケットは手を入れるところだから。それも親指以外の4本を入れるところだから」と、当然のことのように答えた。そのパッチポケットは賀茂茄子のような曲線を描いていて、ちょうど指4本を入れる大きさになっている。

「商品(MD)系」はどうか?

「商品(MD)系」はどうか。ワールドは顧客価値の最大化に向け、デザイナーとの提携によるブランドの開発にはどこよりも活発である。田山淳朗という有能なクリエーター(デザイナー)と組んで、時代性、国際性を踏えたオリジナルスタイルを作り出している。田山はパリ在住のときにキャシャレル社のチーフデザイナーであった当時、彼をスカウトしたことで、SPAの最初のブランド「オゾック」は成功に導かれた。彼は現在、ワールドのオソックをはじめインディヴィ、ボイコットなど主要SPAブランドの代表的プロデューサーである。加えて同社のメインデザイナー菊地武夫との「タケオーキクチ」ブランド。また、エクリスブランドやキョウイチーフジタのブランドで藤田恭一との提携による百貨店のインショップや路面店展開に入っている。また今期から「ケイターマルヤマ」というブランドで直営店や卸事業のブランドとして参入している。このほかにも、横森美奈子との提携もすすんでいる。さらに商品(MD)系で特徴的なのは、横割マーチャンダイジングである。

自由な服装が求められた時代背景

カジュアルなスタイルが自由なスタイルであれば、自由でないスタイルも存在する。それをここでは、たまたまクラシック(フォーマル)なスタイルと称しているのだが、この対置は「波止場」の悪党と沖仲士たち、貴族と庶民、屋内労働者と屋外労働者など、服の世界ではいつの時代でも存在した現象である。自由でないスタイルとは、伝統的であるがゆえに、構造的変更をあまり加えることができない服のことである。そして伝統的であるがゆえに、また往々にして支配者階級の服だったために史実に残りやすく、反面自由なスタイルは、労働着だったため、ほとんど残されていない。日本でも、権力者たちの服は残されているが、そうでない自由な服はほとんど残っていない。労働のためではない自由な服、つまり現代でいうカジュアルウェアに近い類が登場するのは17世紀のことである。歴史上新たな服が登場するには、社会的変革が条件で、カジュアルなスタイルが誕生したいちばん大きな理由は、産業革命やフランス革命による、支配者と被支配者の混交である。混交によってある種の服が消滅し、その代わりに新たな服が、そしてさらなる社会的変動によって、服の構造的改革がなされたのだ。その代償の一部として、カジュアルな服が登場するのである。豊かになった庶民たちが、重いフロックコートの代わりに気楽に身につけられる衣服を求めたのだ。