掛紙の表書きや名入れの文字の色は薄墨と濃墨がありますが、その地域の慣習にしたがうのが無難です。どちらも正しく、間違いではありません。薄墨は関西、中国、九州地方が多いようです。ここで気を付けたいのは、書状は濃墨で掛紙は薄墨というように統一されていない書き方はいけません。掛紙に使われる白紙は「奉書」といって、神聖なものです。汚れから身を守るものとして、神事でよく使われます。贈り物を汚れから守るという意味で、品物に巻かれます。水引は単に結ぶためのものですが、平安の頃、唐から輸入された唐物は貴族の間で珍重されていました。この唐物は、必ず紅白のロープで荷造りされていたので、その後、進物で紅白の紐が結わえてあるものは高級品とされ、この習慣が装飾的な水引に変化していきました。水引は、弔事は白黒(関西では黄白)、祝いごとは紅白です。掛紙の表書きは、贈り主の気持ちを簡潔に表したものですから、本来はこうでなければならないという決まりはありません。故人の名を記しか差し紙をつくって「忌明志」としたり(京都)、短冊に戒名を書いた下に○○家と喪主の苗字を書くこともあります(岐阜)。「松の葉」「花一翰」などは奥ゆかしいものです。
公共の場でエチケットを守るという概念は、欧米人のほうがずっと意識が高いですね。日本では言葉だけがひとり歩きしているようで、残念ながら行動までは定着していないような気がします。「エチケット」の語源は、フランス語の「チケット」というフランス王朝宮廷人の教養を表わす言葉から生まれたともいわれています。その根底には、西欧道義の基本精神である騎士道やキリスト教義があって、これが西欧社会では、上下各層の規律として高度に整理された礼儀作法の原点なのです。そしてエチケットの基本は、「人に好感を与えること」「人に迷惑をかけないこと」「人を尊敬すること」の三つ。「人に迷惑をかけないこと」とは、「他人に対して思いやりのある行為」であり、「人を尊敬する」という言葉には、女性への尊敬も含まれていることを忘れてはいけません。これが、いうまでもなくレディファーストの精神につながっています。
手紙を書くのが苦手という人が多いですね。きちんと書かなければいけないという思いが先走って、かたちにとらわれ過ぎているからではないでしょうか。「時下益々御清祥のことと御慶び申しあげます」といった書き出しでは、いかにも手紙の書き方の本から引用したようで、表現がかた過ぎます。素直な話し言葉でていねいに書けば、きっと感謝の気持ちは伝わります。ただ、ふつうの手紙での「拝啓」に「敬具」、ていねいな手紙での「謹啓」に「謹白」、前文を省略する場合の「前略」に「草々」、返信の場合の「拝復」に「敬具」いうように、よく使われる頭語と結語の関係だけは間違えないように。以下の4つのパートにまとめるのが、上手に書くコツです。?「前文」頭語(拝啓など)、時候のあいさつ。相手の安否を気づかい、自分の安否を伝えます。?「主文」「さて」「つきまして」など起こしの言葉のあとに、感謝の気持ちやいただいた品物への感想など、主な目的や用件を簡潔に書きます。?「末文」相手やその家族の健康、繁栄を祈っているむねを書きます。?「あと付け」結語(敬具など)、日付・署名・宛名(敬称)でしめくくります。